忙しい会社員の強い味方といえば牛丼チェーン。安くて早くておいしいごはんを食べられるのが魅力です。
牛丼屋といえば、以前は男性客が中心というイメージ。でも今は、吉野家が野菜の多いベジメニューを展開したり、すき家がファミリー層の獲得に力を入れるなどして、誰でも気軽に入りやすくなっていますね。
私の住む街には牛丼屋が一軒もないのでほぼ行かないのですが、牛丼チェーンをちょくちょく利用するという方から、「どういうメニューを選べば栄養的にいいですか?」と質問されたので調べてみました。
結論を先に書くと、牛丼チェーンの魅力は「早さ」と「コスパのよさ」。「栄養バランス」についての優先順位は高くありません。ですから食事に気を遣う方へ積極的におすすめするという内容の記事にはなりませんでした。
ただ、利用する際に「健康に配慮して食べるポイント」をお伝えしますので、牛丼チェーンをよく利用する方の参考になればうれしいです。
【目次】
「栄養的にいい」かどうかの判断基準って何?

理想の栄養バランスやおすすめメニューは人によって違う
大前提として、「栄養的にいい」かどうかを何で判断するかが大切です。栄養バランスがとれているかどうかは、その人の年齢、性別、健康状態、妊娠しているかどうかなどによって異なるからです。
どれぐらいの頻度で牛丼チェーンを利用するかによっても、おすすめメニューは違います。週6日は自宅でバランスの摂れた食事をしているなら、外食時にちょっとバランスが崩れても体への影響は少なめ。一方で頻繁に利用する場合は、外食での栄養バランスが健康状態に大きな影響を与えます。
ただ、どんな方にとって栄養バランスがいいか細かく説明するとかえってわかりにくくなるので、この記事では以下のポイントに絞ってお話しします。
この記事で「栄養のバランス」を判断する基準
1)カロリーが燃焼されやすい栄養バランスになっているかどうか
2)塩分量が多すぎないか
3)野菜は摂れているか?
順番にご説明しますね。
1)カロリーが燃焼されやすい栄養バランスになっているかどうか

食事の時、カロリーを気にする以上に大切なことは、食べたカロリーをしっかり燃焼させること。燃焼されやすいかどうかは、栄養バランスが大切です。カロリーがある3大栄養素「タンパク質」「脂質」「炭水化物」のバランスは以下が理想的とされています。
理想的とされているカロリーバランス

ポイントは2つ
●炭水化物が半分以上

炭水化物は3大栄養素の中で最も燃えやすい栄養素。炭水化物は減らしすぎると体温が上がりにくく、代謝が悪化して、カロリーが燃えにくくなります。全体の半分以上は摂ることが「燃えやすい身体を作る」ためには大切です。
●脂質は1/4以下

脂質が多いと炭水化物が燃えにくくなってしまいます。ただし脂質も大切な栄養素。減らしすぎもよくないので、上限を守って適度に摂ってくださいね。
では、牛丼チェーン店のメニューのカロリーバランスはどうなっているのでしょうか?
牛丼チェーン各社が発表している栄養成分一覧をもとに、たんぱく質、脂質、炭水化物の割合を計算してみるとこんな結果になりました。
牛丼・牛めしのカロリーバランスは?

牛丼・牛めし(並盛)のカロリーバランス | 炭水化物(%) | 脂質(%) | たんぱく質(%) |
---|---|---|---|
吉野家 652kcal | 59.1 | 28.6 | 12.3 |
すき家 639kcal | 65.4 | 21.8 | 12.8 |
松屋 709kcal | 59.2 | 30.2 | 10.6 |
なか卯 715kcal | 66.5 | 23.7 | 9.8 |
脂質の割合は、すき家、なか卯以外は25%以下、吉野家、松屋は25%以上です。
昼・夜の定食のカロリーバランスは?
定食のカロリーバランス | 炭水化物(%) | 脂質(%) | たんぱく質(%) |
---|---|---|---|
吉野家 ベジ牛定食 645kcal | 51.5 | 35.6 | 12.9 |
すき家 牛皿定食 783kcal | 58.0 | 26.3 | 15.7 |
松屋 牛焼肉定食 783kcal | 52.6 | 34.6 | 12.8 |
なか卯 豚キムチ定食 936kcal | 52.2 | 37.1 | 10.7 |
吉野家のベジ牛定食は半日分の野菜と牛肉が摂れるヘルシーメニュー。ただし意外にも脂質の割合は高めです。脂質の割合が一番低いすき家も25%は超えていますね。
しかも定食によくついてくるサラダにかけるドレッシングは上記に含まれていません。なので、ドレッシングをかけると、脂質の割合はさらに増えるということを覚えておきましょう。
朝の定食のカロリーバランスは?

朝定食のカロリーバランス | 炭水化物(%) | 脂質(%) | たんぱく質(%) |
---|---|---|---|
吉野家 納豆牛小鉢定食 634kcal | 63.7 | 22.3 | 14.0 |
すき家 たまかけ納豆朝食 743kcal | 62.2 | 23.9 | 13.9 |
なか卯 納豆朝定食 613kcal | 68.1 | 17.3 | 14.6 |
※松屋の朝の定食では、小鉢が5種類から選べます。選ぶ小鉢によって栄養バランスが変わるため、一覧からは外しました。
上記のメニューはどれも脂質が25%を下回っています!すばらしい!!
全体的に見て栄養バランスという点では、朝の定食は理想に近いといえます。ただしハムエッグやベーコンエッグなどを選ぶと脂質は多くなるので気を付けてください。
残念なのは、朝の定食は遅くても11時には終わってしまうこと。脂質の少ない食事は夜遅く食べる方にはおススメなのですが。朝定のような夜定食をぜひ、展開してほしいものです。
2)塩分量が多すぎないか

外食を利用する時、避けて通れないのが塩分の摂りすぎ。牛丼チェーンもその例にもれず、塩分量が多めです。
ちなみに1日当たりの塩分摂取量の目標量は以下の通り↓
▼厚生労働省の1日あたりの塩分摂取量の目標値
男性 8g
女性 7g
▼高血圧学会の1日あたりの塩分摂取量の推奨値
6g未満
けっこう少ないでしょ。これをクリアできればいいのですが、日本人は諸外国より塩分を多めにとる傾向があります。実際に私たちが摂っている塩分の平均摂取量は以下の通り。
▼日本人の1日あたりの平均塩分摂取量
男性 11.0g
女性 9.2g
厚生労働省「性別・年齢階級別食塩摂取量」(20歳以上/平成27年)
これを踏まえて、上で紹介したメニューの塩分量をまとめてみました。
牛丼・牛めしの塩分量
牛丼・牛めし(並盛)の塩分量 |
塩分量 |
---|---|
吉野家 | 2.7g |
すき家 | 2.6g |
松屋 | 3.1g |
なか卯 | 2.3g |
これに味噌汁を加えると、塩分量は約1.7gプラスに、野菜サラダを加えると、ドレッシングから0.5~0.7g程度プラスになるので、やはり塩分量は高めです。
昼・夜の定食の塩分量
定食の塩分量 |
塩分量 |
---|---|
吉野家 ベジ牛定食 | 4.6g |
すき家 牛皿定食 | 6.4g |
松屋 牛焼肉定食 | 2.9g |
なか卯 豚キムチ定食 | 6.6g |
定食には味噌汁がつくので単品より高くなります。松屋の牛焼肉定食の塩分が2.9gなのは低いですね。味噌汁だけでも1.7gあるので、おそらく焼き肉のたれが塩分量に含まれていないのではないでしょうか。たれをかけると塩分量は他の定食と同じぐらいになると思います。
朝の定食の塩分量
朝定食の塩分量 |
塩分量 |
---|---|
吉野家 納豆牛小鉢定食 | 3.0g |
すき家 たまかけ納豆朝食 | 3.8g |
松屋 選べる小鉢の玉子かけごはん | 1.8~3.2 |
なか卯 納豆朝定食 | 3.8g |
だいたい3g台におさまりますね。昼・夜の定食に比べると塩分量は控えめなメニューが多いです。
※松屋の朝の定食では、小鉢が納豆・とろろ・ミニ牛皿・冷やっこ・茎わさび山形だしから選べます。塩分量が1.8gと低いのはとろろや冷や奴に何もかかっていないため。醤油などをかけると、他の定食とそれほど変わらなくなります。
塩分が多めなのは牛丼チェーンに限ったことではなく、外食全般にいえること。仕事の関係で外食しがちな人は、家で食べる時は塩分を控えめにするなどして、1日トータルで塩分を摂りすぎないようにしてください。
3)野菜は摂れているか?

外食では野菜不足になりがち。厚生労働省が推奨する野菜の摂取量は1日350g。
ということは毎食100gちょっと。
生野菜なら両手に軽く1杯
加熱した野菜なら握り小ぶりひとつ分
1日5皿分の野菜を食べるイメージです↓





まぁまぁな量ですよね。牛丼チェーンで十分な量の野菜は摂れるのでしょうか?
吉野家にはベジメニューがある
吉野家には野菜が多めのベジメニューが用意されている店もあるので、上手に利用してみて下さい。脂質の割合が35.6%、塩分が4.6gあるのですが、チェーン店で野菜がこんなにたっぷりとれるメニューは珍しいです!
野菜サラダもいいけど注意点もあり

ちなみに野菜不足の解消に野菜サラダを食べる人も多いと思います。サラダを食べると食物繊維の摂取は増えますが、ドレッシングをかけると脂質の割合も増えてしまいます。
牛丼単品の脂質の割合
牛丼単品の脂質の割合は28.6%です。
(吉野家の牛丼並盛の場合)
牛丼+サラダの脂質の割合
牛丼にサラダを追加すると、脂質の割合は以下のようになります。

+

+
胡麻ドレッシングなら脂質33.5%
醤油ドレッシングなら脂質32.8%
ドレッシングをかけることで脂質の割合が増えてしまいます。せっかく野菜を食べたのに、カロリーが燃えにくくなってしまうなんてもったいないですよね。
では、ノンオイルドレッシングにすればいいのでしょうか?そうすれば確かに脂質の割合があがりません。
ただしノンオイルドレッシングには糖分や化学調味料などで旨味を加えられていることが多いんです。塩分量も高い傾向があります。
どうすればいいんだーって感じですよね…
ドレッシングを選ぶ際は、脂質を低く抑えるか、糖分、添加物、塩分などを低く抑えるか、考えて決めるようにしてください。
ポテトサラダは野菜少なめで炭水化物と脂質が多め

人気の高いポテトサラダですが、「サラダ」と名前についているものの、栄養素的には炭水化物の割合が高め。ですから「野菜」というよりは「主食」に近い存在です。
マヨネーズであえてあるので脂質も多め。脂質が多いメニューのサイドメニューとして選ぶのはおすすめできません。
なるべく野菜が多いメニューを選ぶ

ネギや季節の野菜がトッピングされたメニューが用意されているお店もありますね。1食あたりの野菜量としては十分とはいえませんが、野菜を少しでも多くとるなら、そのようなメニューを意識して選ぶのもいいでしょう。
ちりもつもれば…ぐらいのつもりで、野菜はコツコツ食べてください。
ここまで調べてみて、牛丼チェーンで十分な野菜量を栄養バランスよく摂るのはなかなかハードルが高いと感じました。なので、ここは割り切るのもひとつの手です。
牛丼を食べる目的は「早さ」と「コスパの良さ」。吉野家のベジ牛定食のような野菜たっぷりメニューは別として、野菜を十分に摂れない場合は、その1食にこだわる必要はありません。
1日トータルで350gが摂れるよう、家での食事で野菜を増やすなど、量を調整してみましょう。
牛丼チェーンでの食べ方まとめ
1)カロリーが燃焼されやすい栄養バランスになっているかどうか
→脂質の割合が高く、カロリーが燃えにくい栄養バランスのメニューが多い
→朝の定食系は脂質の割合が低く栄養バランスがいいメニューが多い
2)塩分量が多すぎないか
→味噌汁、サラダのドレッシングなどが加わると塩分量が増える
→1食で見ず、1日トータルで適量になるよう調整する
3)野菜は摂れているか?
→野菜の多いメニューを選ぶ
→野菜サラダは脂質の割合も高くなることを覚えておく
→ポテトサラダは炭水化物と脂質の割合が高い
→野菜が摂れない場合は1日トータルで適量になるよう調整する
結論
栄養素的に見ると、牛丼チェーンは脂質の割合が高く、塩分が多く、野菜が少なめのメニューが多い傾向にあります。たまに食べるならいいのですが、毎日、牛丼ばかり食べるのはおすすめできません。
ただし、急いでいる時や、自炊する元気がない時にはとても便利で頼れる存在ですよね。
健康的な食事と便利さは両立が難しいということを理解したうえで、上手に利用してください。
栄養バランスを摂るなら家での食事がやっぱり大切
栄養バランスが気になる方は、家で食べる食事を大切にするといいでしょう。難しいことをする必要はありません。
基本は、ごはんと具だくさんみそ汁に1品加えた一汁一菜を食べること。

そうすれば栄養バランスが大きく崩れる心配は少なくなります。
日々のごはんをしっかり食べていれば、たまの外食は好きなものを食べられますよ。
外食やコンビニでバランスよく食べる方法についてはこちらの動画でもご紹介しています
>>管理栄養士がおすすめするバランスの良い外食ランチの選び方
>>コンビニで栄養バランスよく食べるポイント
では、今日もおいしく食べて、元気に過ごしましょう!
【3食しっかり食べて体型と健康を維持する食事法を動画で紹介】
>>赤松るみYouTubeチャンネル「人生を変える食事の学校」
【3食の食事バランスを写真で紹介】
>>赤松るみInstagram
※掲載の内容は、2018年8月時点のデータを基にしています。
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